もともとパテック フィリップの本社があるジュネーブは、七宝装飾などのハンドクラフトの中心地でした。20世紀初頭にアール・ヌーボーが大流行し、七宝芸術は絶頂期を迎えますが、動植物のモチーフが多いのもその名残りです。
このドーム・テーブルクロックもタンチョウが草花の中で舞う情景を有線本七宝(グラン・フー・クロワゾネ・エナメル装飾技法)によるエナメル装飾で表現したものです。
タンチョウとは頭のてっぺんが赤い鶴の一種で、幸福と長寿の象徴とされています。日本らしい草花を描きこみ、着物の柄の様に仕上げました。
クロックは本体を囲む3枚の曲面の板、ダイヤル面の平板、そして頭頂部のドーム部分で構成され、それぞれに鮮やかな色彩の草花が描かれています。
ひとつひとつの図案には、断面0.15×0.6mmのゴールドワイヤー(金線)による囲いを作り、そこに透明、不透明、乳白色の釉薬を流し込み、約840度の高温で10回ほど焼成を繰り返すことで芸術的に仕上げました。
クロックにはポケットウォッチなどに使われていた2日間パワーリザーブの機械式ムーブメントCal.17’ ’ ’PENDが採用され、電動モーターで巻き上げることで実用性を高めています。